生きものコラム

スナメリが教えてくれること④~体から浮いた棒状の骨! 骨盤~

藤前干潟ふじまえひがたに漂着したスナメリの骨格が完成してから、約3か月が経とうとしています。

本シリーズも4話目となりました(1話目2話目3話目はコチラ)。今回は「骨盤こつばん」について紹介します。

 

スナメリやその仲間(鯨類げいるい)の祖先は、陸上を4本足で歩いて生活をしていました。しかし、生活の場が水中へと変わったために、前足は胸ビレとなり、後足は退化して、尾ビレを発達させて泳ぐように進化しました。水中での生活を選んだ鯨類げいるいには、後足は不要なものになってしまったのです。

私たちも含めて陸上で暮らす動物には後足があり、体と後足を「骨盤こつばん」という骨の集まりで連結させて、体を支えています。下に「アライグマの骨盤こつばん」の写真を載せました。骨盤こつばんは、寛骨かんこつ仙骨せんこつ尾椎びつい(ヒトの場合は尾骨びこつ)で構成されていて、背骨と後足の骨(大腿骨だいたいこつ)の間で体を支えています。ところが、鯨類げいるいでは後足が退化したため、骨盤こつばんはこの役割を失い、ついには寛骨かんこつが「体から浮いた骨」になってしまいました。上の骨格の写真で、背骨(脊椎せきつい)の両わきにある細長い棒状の骨が、実はスナメリの骨盤こつばんなのです!

 

鯨類げいるい骨盤こつばんは、退化して本来の役割を失い、跡だけが残っている器官(痕跡器官こんせききかん)だと思われてきました。ところが最近、「骨盤こつばんもちゃんと役割を果たしているぞ!」という説が有力となっています。骨盤こつばんには体と後足を連結させるだけなでなく、骨盤こつばんの内部や周辺にある臓器(子宮や生殖器、直腸、肛門など)をお腹の中で固定させる役目も担っています。鯨類げいるい骨盤こつばんでは、前者の役割は不要になったけれども、後者の役割は残っているようなのです。一見不要のように思える細長い棒状の骨にも、大事な役割が隠されているなんて、面白いですね!

(なごや生物多様性センター/曽根啓子)

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