生きものコラム

スナメリが教えてくれること①~胸ビレになった前足~

前回のコラムで、「藤前干潟ふじまえひがたに漂着したスナメリの骨の標本を作ります」という話をしました。現在、全身を骨にする作業を終え、トレーに並べて乾燥させているところです。スナメリの骨を作るのは初めてなので、作成にも力が入りました。その過程で、スナメリならではの骨の特徴をいくつか観察することができました。今回はその中から、胸ビレの骨について話したいと思います。

 

胸ビレの骨の先端(写真の左側)に、5本の扇状に広がっている骨の集まりがあるのがわかりますか?そう、これは「5本の指の骨」です!スナメリの胸ビレは、実は私たち人間の手(前足)と同じものなのです。人間の手とは違って細かな作業はできませんが、スナメリはこの胸ビレを使って、力強く水をかいたり、泳ぐ向きを変えたりしています。

(※詳しい骨の名称を知りたい方は、下の写真↓をクリックしてください!)

 

スナメリの仲間であるイルカ・クジラの祖先は、陸上を四本足で歩いていたと考えられています。ところが、やがて水中で暮らすようになり、足で体を支える必要がなくなったため、前足が泳ぐために役立つ胸ビレへと進化したといわれています。

 

陸上で暮らす動物の前足と水中で暮らすスナメリの胸ビレのように、進化の中で形や役割が変わってしまったけれども、元々は同じ器官であったものを「相同器官そうどうきかん」といいます。鳥類やコウモリの翼も、同じように前足が進化して出来たものです。陸上、水中、空とまったく違う環境で暮らす動物たちにこんな共通点があったとは、驚きですね!

 (なごや生物多様性センター/曽根啓子)

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