スナメリが教えてくれること②~頭のてっぺんに鼻の穴が?!~
生きものコラム 2020.08.18
藤前干潟に漂着したスナメリの骨格標本の続編です。
私たち陸に暮らす動物と違って、一生を海で暮らす道を選んだスナメリの仲間(鯨類)には、ユニークな体の特徴がいろいろと見られます。前回は「胸ビレになった前足」の話をしました。今回は、頭骨を見ながら、「鼻の穴の位置」について紹介します。
スナメリは水中を泳いでいますが魚類ではなく、私たちと同じ哺乳類に属し、肺で呼吸をしています。そのため、時々顔を水面に出して、呼吸をします。
下にキツネとスナメリの頭骨の写真を並べました。鼻の穴(外鼻孔)の位置に注目してください。キツネの鼻の穴は、鼻先(吻部)とよばれる顔の前方にあります。一方、スナメリの鼻の穴は頭のてっぺん(頭頂部)近くにあります。スナメリの鼻先は頭の後方まで大きく発達しているために、前頭骨と頭頂骨が極端に短縮して左右におしやられる格好になっています。このような現象を「テレスコーピング」といいます。一生を海で暮らすスナメリやその仲間(鯨類)では、鼻の穴が頭の上にあることが生存に有利であったために、このような形の進化が起こったと考えられています。普段は何気なく見ている鼻の頭ですが、結構あなどれないでものですね。
(なごや生物多様性センター/曽根啓子)