明和高等学校/SSH部生物班

ムシャクロツバメシジミの分布拡大

<背景>2013年、名古屋市西区の新川堤防において中国を原産地とするムシャクロツバメシジミ(Tongeia filicaudis)(外来種)が発見され、それ以降新川周辺の複数の地点でも生息が確認された。その高い繁殖力から、分布の拡大が示唆されていたが、市街地での分布拡大については、予想程度にとどまっていた。

<調査>2019年6月、私たちは明和高校内で5個体のムシャクロツバメシジミを発見し、3個体を採集した。この時点で名古屋市内で確認されていた繁殖地は新川、庄内川、名城公園(フラワープラザ)の3箇所であり、いずれの地域でもマンネングサ属(以下セダム属とする)の植物を食草としていることが分かっていた。明和高校内でセダム属の分布を確認できていなかったため、採集した個体は高校内で発生したものではなく、周辺(特に名城公園)で発生し飛来したものだと考えていた。しかし同年12月、明和高校内と明和高校前街園の2箇所でセダム属の植物が生えていることを確認。発見したセダム属に何者かによる食痕が残っていたことから、明和高校のムシャクロツバメシジミはこのセダム属を食草として発生したと仮定し、新川繁殖地で採集した幼虫1個体に明和高校のセダム属を餌として与えてみた。結果、幼虫は問題なく成虫まで成長したことから、明和高校が繁殖地になり得ると考察された。

<今後の分布に関する考察>食草となるセダム属の植物は高い耐乾性を持ち、野生では荒原や岩場など水分と土壌の乏しい土地に生息している。セダム属は現在、屋上/壁面緑化として利用されることが多く、既に名古屋市内の多くの施設で植えられているため、これらの緑化もムシャクロツバメシジミの繁殖地になり得ると考えられる。このような状況から今後もムシャクロツバメシジミの分布域は拡大していくと考えられるため、継続的な調査が必要である。

画像

フォトギャラリー

ページトップへ戻るボタン