なごや生物多様性センター(以下、センター)は、2010年に生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が名古屋市で開催されたことをきっかけに設立されました。その役割は、なごや*の生きものに関する情報を収集・発信するとともに、市民や保全団体・専門家・行政などと協働して身近な自然を守り・育てる活動を行うことです。センターは今年9月に設立10周年を迎えました。今号では、これまでセンターが行ってきた取り組みや、生物標本の収集・保管について紹介します。
*:「なごや」とは、名古屋市域および伊勢湾流域圏を指します。
市内の絶滅のおそれのある種を選定した「レッドリスト」と「レッドデータブック」を作成しています。
ヤマトサンショウウオ
マメナシ
なごビオ(なごや生物多様性保全活動協議会) *をはじめ、専門家、学校、行政等と協働して、なごやの生きものを調査・保全する活動を行っています。
*:市民・専門家・名古屋市で構成されている団体で、センターが事務局を務めています。
外来種防除
アライグマ、ハクビシン、
ヌートリアなどの外来哺乳類
ワニガメなどの外来カメ類
桜の天敵・クビアカツヤカミキリ
池干し
2019年12月
ガマ池(庄内緑地)の池干し
池の水を抜いて生きものを調査するとともに、外来生物を除去し、在来生物が生息・生育しやすい環境を整えています。
なごや生きもの一斉調査
2020年10月
バッタ類の一斉調査
毎年調査する生きもの選定し、市内各地でその生息状況を一斉に調査しています。
生きものの調査活動の証拠となるのが、『生物標本(標本)』です。センターでは、調査で採集された動物や植物を標本化して、専用の部屋(標本室)に収蔵しています。
哺乳類標本の作製と
仮剥製標本
寄贈された
さく葉標本
植物標本の作製と
さく葉標本
なぜ生物標本を集めているの?
標本はその生物の形態学的特徴を備えているだけでなく、地球上のどこでいつ生息・生育していたのかなど「今ある生物の姿を後世に残すための証拠品」なのです。
センターでは、調査などで得られた標本を活用することで、なごやの生物多様性を明らかにし、その情報を発信するとともに、今起きている外来種問題について普及啓発しています。
乾燥標本(チョウ類)
どうやって標本を集めているの?
標本となる生きものは、なごビオなどと協働で行った調査や、名古屋市が行っている外来種防除で集められています。また、センター職員が標本採集に出向くことや、標本そのものが市民や専門家から寄贈されることもあります。
池干しで採取したヤハズヌマガイ
外来種防除で捕獲されたアライグマ
藤前干潟に漂着したスナメリの解剖
センター主催の昆虫採集
センター主催の植物採集
寄贈された?葉標本
生きもの情報の発信や市民・保全団体等との連携・交流を目的に、センターでのイベント開催や地域イベントへのブース出展を行っています。また、幅広い世代を対象に、センターの見学や学生の受け入れ、出前講座などを行っています。
なごや生物多様性センターまつり
(2018年10月27日)
天白区民まつり
(2018年10月28日)
あいち・なごや生物多様性EXPO
(2020年1月11・12日)
センターにおける校外学習
(2019年12月6日)
センターにおける職業体験
(2020年12月23日)
隼人池で行ったエコスクール
(2021年6月18日)
名古屋市科学館とのコラボ展示
(2020年6月)
センター玄関の展示
(2021年6月時点)
出番を待つ標本たち
センターに集められた標本は、「標本室」内で管理されています。現在の標本数は、1.8万点以上です。これらの標本のデータは、外部の人でも自由に閲覧できるよう、全国のデータベース(サイエンスミュージアムネット)への登録を順次進めています。
情報発信や普及啓発を目的として、出前講座や環境イベントなどのブースに標本を出張展示することもあります。
温度・湿度が一定に保たれた
標本室のアライグマ仮剥製標本
センターにおける標本数
2021年4月1日現在*
(*:データベース未登録のものも含む)