カナビキソウと繋がる生きもの
生きものコラム 2021.07.19
先日紹介した半寄生植物のカナビキソウの地味すぎる花を撮影しようと、地面に這いつくばっていた時、黒色や赤色の虫がたくさん付いていることに気がつきました。花の撮影時は虫が邪魔だったので、無造作に指で退けていました。
その後、何の虫か気になったため、甲虫類研究者の戸田尚希先生に同定いただいたところ、カナビキソウしか食べない(正確には果実を吸汁する)シロヘリツチカメムシという希少種(環境省レッドリスト2020・名古屋市版レッドリスト2020:準絶滅危惧種)であることがわかりました。
カナビキソウの自生地である河川敷などの明るい環境の草地は、護岸工事や造成工事といった人為的影響によって急速に消滅しています。そのため、名古屋市内ではカナビキソウが減りつつあり、これに依存しているシロヘリツチカメムシは準絶滅危惧種となってしまいました。
「植物が一種類絶滅したところで、人間にとっては大したことではない」と思う人がいるかもしれません。しかし、その植物が失われることで、絶滅の危機に追いやられる生きものがいるのです。
「どんな生きものも、他の生きものと繋がって命を育んでいる」
カナビキソウとシロヘリツチカメムシの関係を知って、改めてそのことを強く実感することができました。
(なごや生物多様性センター/西部めぐみ)