秋の七草〜クズ〜
生きものコラム 2020.10.06
朝晩が涼しくなり、秋を実感する気候になってきましたね。
今日は秋の七草の一つ、クズを紹介します。
クズは、河原や土手、空き地などに生育するマメ科のつる性多年草です。
夏から秋にかけて猛烈な勢いで成長し、あっという間に辺り一面を覆いつくすため、「景観が悪くなる」、「草刈りの際に邪魔だ」といったマイナスのイメージを持つ人もいるかもしれません。実際、アメリカでは、緑化や飼料目的で海外から導入したクズが、暖かな環境下で想定を超えた生育スピードによって繁茂してしまい、駆除に悩まされています。
でも、クズは日本では古くから薬や食料に利用されている有用植物です。
例えば、クズの根(葛根)には発汗や解熱などの効能があるため、風邪の時に飲まれる「葛根湯」という漢方薬の主成分となっています。
さらに、根から得られるデンプンを精製した「葛粉」は、夏の風物詩の葛餅や、冬に飲まれる葛湯として利用されているように、まさに日本人の文化に根付いた植物なのです。
しかも、夏から秋に咲くクズの花は意外なほど綺麗で、ジャスミンのような甘い香りがします。
日本では在来種であるクズは、冬になると寒さで地上部は枯るので除去しやすくなります。
厄介な植物だと捉えずに、うまく利用しながら人間社会と共存できるといいなと思います。
(なごや生物多様性センター/西部めぐみ)