生きものコラム

第45回生物多様性カフェ「昆虫界のエイリアン 寄生蜂(きせいほう)」を開催しました!

令和7年11月30日、なごや生物多様性センターで第45回生物多様性カフェを開催しました。

今回の話題提供者は、名城大学農学部名誉教授の山岸健三先生で、テーマは寄生蜂(きせいほう)。あの手この手で寄主(きしゅ:寄生したい生きもの)となる昆虫に産卵し、寄生しながら生きるというまさに「エイリアン」のような蜂の生態について、興味深いお話を聞かせていただきました。

山岸先生は高校生の頃に窓ガラスにくっついた0.4ミリの寄生蜂に興味を持ったのをきっかけに、そこから約半世紀にわたり寄生蜂研究を続けておられます。会場には山岸先生の標本も展示されており、参加者の皆さまも寄生蜂の小ささに驚いていました。

小さな標本を参加者の方々がのぞき込んでいる様子
小さな寄生蜂標本をのぞき込む様子

 

寄生蜂の話が始まり、まずは寄生蜂とはどんな蜂か、外部寄生、内部寄生という2つの寄生方法について、教えていただきました。

外部寄生はハチ幼虫が奇主を外側から食べる寄生方法、内部寄生はハチ幼虫が寄主の内側から食べる寄生方法です。寄生する生きものだと、寄主を殺さず共生するものもいますが、寄生蜂は最終的には奇主を食べつくしてしまう捕食寄生という形をとるそうです。

寄生の方法についての説明
寄生の方法について

 

外部寄生の難易度は、寄主がどこにいるかによって変わります。例えば深い穴の中に寄主がいる場合は、寄生蜂は産卵管が長くないと穴の中まで届かず、相手に卵を産んで寄生することができません。かといって、外敵にすぐに見つかりそうな浅い場所にいる虫に産卵してしまうと、寄生はしやすいかもしれませんが、寄生した後は自分も外部の天敵から襲われてしまう危険性があります。そのため、寄主した後は木の隙間や土の中など、覆いのある場所にいてもらわないといけません。簡単に、安全に寄生したいというジレンマを解消するために、寄生蜂の中には狩りをする狩蜂(かりばち)がおり、狩蜂は寄主となる幼虫を麻酔で動けなくして木の隙間などに連れ込み、その隙間の端を埋めて自分で覆いを作ってしまうそうです。自ら安全な場所へ寄主を連れてきてしまうという発想に非常に驚きました。

 

一方で内部寄生は、安全な覆いがないなら寄主の中に入ってしまおうという寄生方法です。確かに安全そうだなと思いきや、実は寄主の内部に入った瞬間から、寄主の免疫を司る血球達から攻撃を受けてしまうのだそう。これらの血球達から身を守って内部に寄生し続けるために、寄生蜂がどんな防衛方法を取っているかの一例も解説いただきました。ただし、防衛の仕方はハチによって多種多様で、まだわかっていないことも多いそうです。先生によると、一般的には寄主が蛹のタイミングが寄生のねらい目とのこと。蛹の時は、寄主が成虫になるために体を大幅に形成しなおす過程で、寄主の血球が他の仕事で手一杯になっており、外部から侵入してきた相手へ攻撃するほどの余裕があまりないそうです。

寄主の血球による包囲作用の説明
寄主の血球による包囲作用

先生が研究をしているハラビロクロバチというハチについても詳しく教えていただきました。ハラビロクロバチは卵・幼虫寄生という形をとり、タマバエというハエの一種に寄生するものです。このタマバエもまた面白い生態をしており、一齢幼虫が植物組織内に潜入し、植物内に虫こぶという丸い部屋を作って育つのだそうです。そんなタマバエの卵にハラビロクロバチが産卵しておくと、奇主の幼虫が作ってくれた虫こぶの中に一緒に入ることができるため、非常に安全な環境で過ごすことができます。そして、最終的には寄主が終齢幼虫になったころに皮だけ残して内部を食べつくし、寄主幼虫の皮の中で蛹化してしまうのです。

 

寄生蜂の生き方は、生きものどうしの関わり合い「生物多様性」があるからこそ成り立っているように思います。例えば、タマバエが絶滅してしまったらハラビロクロバチは他の昆虫に寄生できるかどうかを一から試してみなくてはいけなくなり、うまく寄生できなければタマバエと一緒に絶滅してしまうかもしれません。私たちが気付かないだけで、身の回りの生きものたちが深くつながっていることがよくわかるエピソードでした。

その他にも、琥珀の中から発見された古代の寄生蜂の話や、寄生蜂を捕まえて標本化する方法などを網羅的に教えていただきました。参加者の方もみるみる寄生蜂の生態に惹きこまれ、ディープな質問が飛び交いました。

 

最後に、参加者の方から「生まれ変わってハチになれるとしたら、スズメバチのような社会性のあるハチか、寄生蜂どちらが幸せなんでしょうね。」と興味深い質問が。先生もうーんと悩みます。社会性を持って生きるか、個人主義で生きるか。参加者がそれぞれ自分だったらどちらがいいのかと考え、蜂の生き方の奥深さについて思いを馳せました。

 

 

(なごや生物多様性センター 能丸かおり)

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