生きものコラム

2023年度 インターンシップに参加して②

早起きして近所の公園に向かい、大学へと出発する時間が来るまでそこで野鳥を探す。今の私にとってはこれが日常となっています。もともと野鳥が好きだったのですが、コロナ禍で遠出が制限されるようになったことにより近場で鳥を見る機会が増え、いつしか毎朝近所で鳥を探すようになったのです。このような日々を送っていると身近な自然というものに否が応でも興味がもたれるようになります。生まれも育ちも名古屋市の私にとって、身近な自然=名古屋市の自然。そこで名古屋市の自然に最も直接的な関わりができるであろう、なごや生物多様性センターのインターンシップに参加させていただきました。

 

インターンシップでは外来種駆除や在来種の保全に関わる業務を体験し、その中では直接生物に触れるものもありました。例えば、カメ類の計測です。今回は名古屋市内のある池で捕獲されたカメ類の甲羅や体重の計測を行いました。計測したカメは全て外来種のミシシッピアカミミガメで、ノギスを目一杯使わなければ測れないほどの大きな個体もいました。計測のために掴むと必死に暴れたり噛み付こうとしたりしてくる個体も多く、ドキドキしながらの作業です。しかし、腹側の甲羅を測るために逆さにするとどんな個体も途端に大人しくなるのがおもしろいところです。その後、センターで生まれたニホンイシガメの卵の採集と計測も行いました。これらの作業は地域の保全団体の方など、センターの職員ではない一般の方々とも協働で行いました。

 

 

 

直接生物に触れる業務はこのように生きている生物を扱うものだけではなく、死んでいる生物を扱うものもあります。センターの重要な業務の一つである標本の収集・作製・管理がその例です。この業務はいつどんな場所にどんな生物がいたのかを後世に伝える重要な業務です。また、標本にすることで捕獲・採集から時間が経過しても外見やDNAサンプルなどを基にした研究をすることができます。センターで作製する標本には市民から提供された個体や市民から連絡を受けて捕獲した個体を使用することも多いそうです。今回は名古屋市内の一般家庭で捕獲されたハクビシンを剥製にする業務を体験させていただきました。

 

まずは各部位の計測を行っていきます。カメの計測とは異なりすでに死んでいる個体を使っているので、暴れない分扱いやすいです。その後、下腹部からメスを入れ、皮を剥いでいきます。筋肉や脂肪、臓器は余分なので除去するのですが、素人目には皮と脂肪を見分けるのが難しい! 脂肪と間違えて皮に大穴を開けてしまいました。この穴はひとまず置いておいて、顔までコツコツと皮を剥いでいきます。作業の途中では、この個体が乳歯を残す若い個体であると分かりました。

 

 

剥ぎ終わった皮は裏返しになった状態。ここに防腐加工をしてから裏返った皮をもとに戻します。裏返った靴下を元に戻す時のようでちょっと気持ちいい。この皮に綿を詰めて形を整え、メスで切った部分を縫い合わせると剥製の形の出来上がりです。私が開けた大穴も縫い合わせることで目立たなくなり一安心でした。

 

 

 

しかし、標本の作製としては最後に重要な過程があります。それがラベル作成。標本は取得日や取得場所の情報が無ければ学術的な価値のないものになってしまうからです。市民が作製しセンターへの寄贈を希望する標本もこのラベルが無い場合があり、泣く泣く断ることも多いとか。今回の剥製ではしっかり場所や日付、種名、計測値などをラベルに記載し、いよいよ標本が完成しました。いずれこの標本に標本番号が与えられ、他の貴重な標本たちとともに保管されるそうです。

 

今回のインターンシップでは、地域の生物多様性を守り伝えていくなごや生物多様性センターの重要性を身をもって学ぶことができました。また、センターの活動が市民とのつながりの中で成り立っていることを感じる場面も多々ありました。今後は、これまでの一市民としての観点に、今回の体験をもとにしたセンター職員の方々の観点も加えて、身近な生物多様性と関わっていきたいと思います。

 

(なごや生物多様性センターインターン生/柴山潤太)

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