生きものコラム

2023年度 インターンシップに参加して①

鉈で木の皮をめくって幼虫を探す

私は学部生のときに動物園動物について学び、その中で生物多様性の保全を目的とした、来園者と生物をつなぐ活動を目にする機会が多くありました。そのため市民の方と協働で生物多様性の保全に尽力しておられる、なごや生物多様性センターの活動に興味を持ち、生物多様性というテーマを背景に人々と地域の生物をつなぐ役割について学びたいと思ったため、このインターンシップへ応募しました。

 

クビアカツヤカミキリの現地調査では、被害調査だけでなく、被害にあった樹木への実際の処置を行いました。事前の説明でクビアカツヤカミキリ防除にはチラシなどを用いた情報発信に力を入れていると伺い、また調査で扱った被害樹木は市民の方からの通報により発見されたとのことでした。こうした市民の方による環境の観察が生物に対する処置や対応を進める基盤となることを感じ、積極的な情報発信による地域の人々との連携の大切さを学びました。

 

 

また、液浸標本の取り扱いでは、液浸標本庫の見学と、水生生物の液浸標本を用いた種の同定を体験させていただきました。見学では主に魚類の標本の取り扱いについて解説していただき、同定では図鑑などを用いて標本の鰓の位置や口の形、または生息地のヒントから種を特定する作業を行いました。これらの体験から、生物の証拠として生物標本の適切な製作や管理が、後の研究や学習に必要不可欠であることが身をもって理解できました。例えば標本の同定は、前述したように標本の形態を観察し、採取地などの情報も用いて種を絞り込みます。そのためには適切な方法で形を整えられた標本と、標本の基本情報がそろっていることが不可欠となります。さらに、もし標本にされている種が一部の地域で絶滅した際に、標本はその地域に何がいたかという貴重な記録となります。このように、形態学的な記録としてだけでなく、後の世に生息地の分布などを示す証拠としての役割もある生物標本を、管理し残しておくことの重要さを実感しました。

 

 

この他にも様々な生物の保護・保全につながる活動に携わらせていただき、情報の発信と保存という形で市民とつながり、地域の生物多様性を守ることについて改めて考えさせられることばかりでした。このインターンシップで学んだことを生かし、今後はいかに生物多様性について多くの人に知ってもらえるかを意識してより広く知識を深め、情報を発信していくために自分ができることを増やしていけるよう行動していきたいと思います。

(なごや生物多様性センターインターン生/大橋未来)

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