生きものコラム

春の匂い

日中は春の陽気で、暖かい日が多くなってきました。

早春の今頃、市内の里山環境が残された緑地公園を歩くと、なんとも言えない匂いが漂ってきます。

青臭いような、人によっては「ガス漏れ?!」と思うこともあるこの微妙な匂いは、あまり良い匂いとは言えないかもしれません。

この匂いの正体は、ヒサカキという樹木の花です。

神仏への「お供え」としても使用されることから、馴染みのある人も多いのではないでしょうか?

 

ヒサカキは雌雄異株の常緑小高木で、葉は縁がギザギザした特徴的な形をしています。

名古屋市内では、里山環境がある緑地公園などで普通に見ることができます。

3月頃から咲きはじめる小さな花は、雄株と雌株で形は異なりますが、どちらも葉の裏側に密集した状態でつきます。そのため、遠くから見ても花はあまり目立たず、開花に気がつく人は少ないかもしれません。

ところが、開花期には、たとえマスクをして数十メートル離れていても感じるほどの強い芳香を放つため、この匂いを嗅いだことがある人はかなり多いはずです。

春らしい華やかなイメージとは一線を画した匂いを放つ、でも確かに春の訪れを告げてくれるヒサカキ。

花が激臭を放つことで有名な、ラフレシアやショクダイオオコンニャクのような万人に衝撃を与える匂いでこそありませんが、日本ならではの春を感じる独特な匂いを探しに、里山へ散策へ出かけませんか?

 

(なごや生物多様性センター/西部めぐみ)

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