生きものコラム

標本整理の仕事 ~哺乳類編~

センターの哺乳類コレクションの多数を占めているのは、アライグマやハクビシンなどの中型哺乳類の頭骨標本です。実はこの2種だけでも約600頭分あり、今後も増えていく予定です。標本数が増えるのはもちろん歓迎なのですが、活用できる状態で維持・管理されていなければ、せっかくの”お宝”も死蔵してしまいかねません。そのため、センターで作製した哺乳類標本については、すぐに番号付けをして整理するようにしています。今回は、その整理方法について紹介したいと思います。

 

まず、作製した頭骨標本は、1頭ごとに透明なチャック袋に入れて保管します。チャック袋の中には、標本以外に「個体番号」を記したラベル用紙も入れておきます。個体番号は標本のもととなった個体(動物)を採集した際に付与する番号で、いわば個体のIDです。番号の付け方にはセンター独自のルールがあり、例えば2017年5月30日に採集された個体(ハクビシン)は、「個体番号:17053001」のようになります。なお、下二桁の「01」は、「その日に採集された1番目の個体」という意味です。

さらに、標本がある程度まとまった数になると、「標本番号」を付与します。標本番号の付け方にもルールがあり、通し番号で付けていきます。例えば、先程のハクビシンの頭骨標本には「標本番号:NBC-MA00429」が与えられたのですが、これは「なごや生物多様性センターにおける429番目の哺乳類標本」という意味です。なお、「NBC」は「Nagoya Biodiversity Center(なごや生物多様性センター)」の頭文字、「MA」は「Mammal(哺乳類)」を指す略語です。

 

標本番号が決まって次に行うことは、標本に標本番号をラベルすることです。先の個体番号のように、チャック袋の中に番号を記した用紙を加える手もあるのですが、センターでは標本に直接番号を記入しています。これなら、観察や撮影のために複数の標本を取り出した際にも、標本を取り違えることなく正しい場所に戻すことが可能です。学生時代に訪れたアメリカ自然史博物館でも、同様の管理がなされていたことを思えば、標本の散逸を防ぐ最もシンプルで確実な方法と言えるのではないでしょうか。

標本の作製にも手間と時間がかかりますが、それを整理して維持・管理していくにも様々な工夫が凝らされていることを知って頂けましたでしょうか?

(なごや生物多様性センター/曽根啓子)

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