タヌキの死因を突き止めろ!
10月7日に、守山区役所付近で拾得されたタヌキを、センターに収容しました。外見上は目立った出血や傷もなく、毛皮も大変きれいな個体(上の写真)でしたので、なぜ死んでいたのか不思議に思い、ムササビの時と同様、解剖して調べてみることにしました。
解剖して内部(骨や皮膚、筋肉など)の状態をよく見てみると、まず左側の大腿骨(太ももの骨)に骨折が見られました(写真①)。体の左側に、強い衝撃を受けたようです。また、胸部の皮膚の下には出血が見られました。打ち身による内出血でしょうか。さらに、横隔膜の左半分が破裂していました。横隔膜は胸部と腹部とを仕切る筋肉の膜で、呼吸をする時に使われる重要な筋肉です。これが破れてしまうと、当然呼吸が出来なくなったことでしょう。以上の所見から、このタヌキは交通事故に遭い、呼吸不全などに陥って死亡した可能性が極めて高いと考えられました。
実はタヌキは、春と秋に交通事故に遭いやすい動物であることで有名です。これには、タヌキの生活史が深く影響しています。春はタヌキの繁殖期で、繁殖相手を求めて普段よりも行動が活発になり、より遠くにまで移動するため、必然的に事故に遭いやすくなります。一方、秋は春に産まれた子どもが親から独り立ちして分散する時期で、不慣れな土地での移動を余儀なくされた若い個体が事故に遭いやすくなるようです。これらの知見を今回のタヌキに当てはめてみると、拾得された日が10月7日であったことに加えて、歯の磨り減り具合から判断して、今春生まれの若い個体であったとことも、交通事故と扱って矛盾のない結果でした。
「外見だけでは分からなかったことが、解剖すると見えてくる・・」、今回はそんなことを実感するまたとない機会となりました。タヌキの収容に関わって下さった皆様に感謝です!
(なごや生物多様性センター/曽根啓子)