ネズミの前歯はのび続けるとどうなるの?
生きものコラム 2020.05.08
前回、「ネズミの前歯(切歯)は一生のび続ける」というコラムを書きました。今回はこの話題についてもう少し詳しく話をしたいと思います。
ネズミの前歯は一生のび続ける歯で、このような性質をもった歯を「常生歯」といいます。ネズミの前歯は上下で対をなして並んでおり、固く繊維の多いものを食べることによって上下の歯がこすれて、どんどん伸びる歯が自動的に削られるのです。だから、固いものをかじり続けている限り、歯がのび過ぎて困るということはないのです。
ところが、ケガなどで歯が一方だけ欠けてしまったり、柔らかいものばかりを食べていると、前歯が咬み合わせの悪い状態となります。すると、歯が十分に削られず、前歯が本来の長さよりものび過ぎてしまう症状(切歯過長)になります。前歯がのび過ぎると、皮膚を貫通して痛みが出たり、歯が邪魔で食事ができなかったりして、最悪の場合、死んでしまうこともあるのです。ペットとして飼われているネズミ(ハムスターなど)や実験用のネズミ(マウスなど)で、このような症状がたびたび見られます。人間でも、「口は健康の入口、歯は大事にしましょう」といわれますが、歯が大切なのは他の動物でも同じですね!
(なごや生物多様性センター/曽根啓子)