毛皮がいいね! 巨大ネズミ・ヌートリア
名古屋市の水辺でも最近よく見かける、巨大ネズミのヌートリア。もともとは南米中南部(アルゼンチンなど)が原産地ですが、どうして日本にやってきたのか知っていますか?
それはヌートリアが水辺で暮らしていることと関係があります。水中で長時間を過ごす動物の毛皮は、耐水性や保温性に富んだものであることが多く、ヌートリアも良質な毛皮を持っています。カワウソ(獺)になぞらえて、「陸獺(オカウソ)」と呼ばれていたこともあります。また、ネズミの仲間であるために、丈夫で増えやすい(繁殖しやすい)という特性も備えています。
このような理由から、第二次世界大戦頃には軍隊の防寒用飛行服の裏地を採取する目的で、日本各地で飼育されていました。この時代、「ヌートリアをうまく飼育するコツ」を解説したマニュアル本も発刊されていたほどで、一大ブームになっていたことがうかがえます。そのかいあってか、最盛期には全国で約4万頭もが飼育されていました。しかし、戦争の終結とともに、ヌートリアの毛皮の人気はなくなり、野外に逃げたり、捨てられたりしたために野生化し、その子孫が現在まで生き残っているわけなのです。
日本ではすっかりブームが去ってしまったヌートリアの毛皮ですが、東ヨーロッパではまだ飼育を続けている国もあり、実際に毛皮も輸出・販売されています。日本のデパートでも、「ヌートリアマフラー」が高級商品として販売されていた記録が残っています。
ヌートリアは「特定外来生物」なので、身近にいてもらっても困るのですが、のんびり屋で比較的観察しやすい動物でもあります。せっかく見かける機会があったら、毛皮などの特徴にも目を向けて、他の動物と見比べてもらえればいいなと思います。
(なごや生物多様性センター/曽根啓子)